元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~
横断歩道を渡り、反対側の歩道に入ったふたりが、そのままショップやコンビニが立ち並ぶその通りを歩いて行くと


「ここは・・・。」


ハッと気づいたように、湊が和那の顔を見る。


「このキャンパスも、久しぶりだな。」


「えっ?」


「取り敢えず、入ってみよう。」


驚く湊に構わず、和那は校門を潜って行く。


土曜日の夕方のキャンパスは、授業というより、サークル活動の為にここを訪れている学生が多いようだった。思い思いの服装やユニホ-ム姿で闊歩する学生たちに交じって、系列校の生徒なのか、あるいは受験に備えてのキャンパス見学なのか、高校生の姿も散見される。


「今は青々としてるけどさ。」


今、ふたりが歩いている校内通路の両脇には、見事な銀杏の木が並んでいる。


「秋になると、黄色くなって、葉っぱがどんどん落ちて来て、その上、銀杏の匂いが結構強烈でさ。」


「・・・。」


「でもその銀杏を拾って、持って帰る猛者がいて、どうするのかと思ったら、茶碗蒸し作って入れるんだって。本当かな?」


そう言って、和那はクスリと笑う。そんなことを話しながら、ふたりがゆっくりとキャンパスの中を歩いていると、どこからか、ギターの音が聞こえてくる。まだ練習を始めたばかりなのか、同じフレーズを何度も繰り返していた。


その音に耳を澄ませるように、和那は小さく笑う。


「この音、なんかいいね。」


「そう、だな・・・。」


硬い表情だった湊も、その音に耳を傾けると、思わず、表情が緩む。
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