元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~
「昼休みでも、講義終わりでも、どこかで誰かが音を出してたものなぁ。」


和那は少し遠くを見るような目をする。


「講義が終わると、みんな急いで部室へ向かってね。『今日スタジオ空いてる?』とか、『ライブまで時間ない!』とか、そんな話ばっかり。」


「どこも同じなんだな、それは。」


湊が笑う。


「朝比奈くんのとこも?」


「似たようなものだった。」


その答えに、和那も笑った。


「だよね。」


そのまま、しばらく歩いて行くと、今度は、ピアノの音が流れてきた。その音に、ハッと和那は足を止め、耳を傾ける。


「気になる?」


「そうだね、やっぱり思い入れがある。」


頷く和那。


「好きなんだな、ピアノが。」


「ううん、ピアノだけじゃない。音楽そのものが、大好き!」


そう言って、微笑む和那。湊はそんな彼女の横顔を、静かに見つめる。


さっきまでレストランで笑っていた彼女とは、少し違う。どこか穏やかで、どこか懐かしそうで。まるで、学生時代の和那がそのまま隣を歩いているような気がした。


やがて、二人は一本の並木道へ出る、木漏れ日が石畳に揺れている。学生たちが笑いながら歩いている先を、楽器ケースを肩に掛けた数人が、急いでいる。その光景を見ながら


「本当に懐かしい・・・。」


和那が思わず、そんな言葉を漏らす。


「とにかく楽しかった、我ながら、思いっきり青春してた4年間だった。笑われるかもしれないけど、戻れるものなら戻りたい。」


(南澤さん・・・。)
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