元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~
この後は、仕事の話もなく、料理と会話、それに適度なアルコ-ルを楽しんだふたりが店を出たのが2時間後。手をつなぎ、歩きながら


「まだ帰りたくない。」


甘えるような視線を向けて来た恋人に


「Of course, Mademoiselle。」


と気取って答える湊だが


「何それ?なんのつもりか知らないけど、英語とフランス語、混ざっちゃってるし、全然ダサい。」


あっさりとダメだしされ


「うっせ。」


「さ、行くよ。時間、もったいない。」


和那に引っ張られるように、歩き出した。ふたりが目指したのは、駅ビルの横の建物の屋上。ここは、夜間は展望台として、解放されていて、東京の美しい夜景を一望できる場所として、特にカップルには人気だった。


「きれい・・・。」


「会社の屋上より高いからな、ここ。」


「そうだね・・・。」


寄り添って、しばらく、無言のまま、目の前に広がる空間を見つめる。


「嬉しい・・・。」


やがて、ポツンと呟くように和那が言う。


「何が?」


「湊とこうして、一緒にここに来て、この景色を眺めていられること。」


「本当だ。まさか、鬼上司とこんな時間を過ごせるようになるなんて、確かに夢のようだ。」


「鬼、言うな。上司も今は禁句。」


恋人に甘く睨まれ


「ごめん。」


湊は謝った次の瞬間、和那の肩を、強く抱き寄せる。
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