元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~
「これ以上の問答は時間の無駄です、早く別の善後策を考えましょう。」


神崎の説得にも、頑として首を縦に振ることなく、湊がそう言うと


「お前、そこまで腑抜けになっちまったのか!」


神崎は厳しい口調で吐き捨てるが


「すみません。」


湊は感情を表すこともなく、静かに頭を下げる。すると


「朝比奈さん。」


和那が彼に呼び掛ける。


「『STILL BLUE』の出番まで40分を切った。」


「分かってます。」


「ベーシストが来てない。」


「それもわかってます。」


「わかってない!」


和那の口調が強くなる。


「この状況で、他に誰がいるの?あなたしかいない、朝比奈湊しか。わからないの?」


「どういう・・・意味ですか?」


「わかってたら、弾かない選択肢なんかありえないはず。ベスト・・・とまではいかなくても、せっかく来てくれた観客に『STILL BLUE』のベタ-なパフォ-マンスを提供するに為には、今はあなたが、朝比奈湊が弾くしかないじゃない。あなたは本当に、そんなこともわからなくなっちゃったの?」


和那は彼を見た。真っ直ぐ、逃がさないように。すると


「どういう意味だよ?なんで、そんな言い方をする、いや出来るんだ・・・?」


湊の顔色が変わっていた。


「あんた。」


一歩、和那に近づく。


「俺のこと、知ってたのか?」


低い声で問い詰めるように言う。でも


「そんなこと、今は関係ない。」


和那は落ち着いていた。
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