元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~
「関係なくはないだろう?」


「ううん、関係ない。」


「っ・・・。」


「今の私たちが成すべきことは1つしかない。このフェスを成功させること、その為に私もあなたもここまで尽力して来た。だとすれば、今はあなたが弾くしかない。あなたしか、朝比奈湊しかいないんだよ。」


「・・・。」


「ここまで言っても、まだ逃げたいなら仕方ない。でも・・・それであなたは本当に後悔しないの?」


沈黙、湊は何も言わない。ただ、和那を見ていた。そして、和那もまた、湊を静かに見つめていた。周囲では無線が飛び交っている、スタッフが走り回っている。時間は残酷なくらい、正確に進んで行く。


「本当に後悔しないのか、か・・・。」


湊が小さく呟いた。でも、和那は何も言わない。いや、言えなかった。もう言うべきことは全部言ったから。あとは彼自身の問題だった。


湊は視線を落とした。床を見る、握った拳を見る。そして・・・ふっと笑った。


「まいったな。」


「何が?」


「南澤さん。」


湊は顔を上げる。


「昔からこうなんですか?」


「え?」


「人を追い込むの、得意ですよね?」


和那が思わず吹き出す。


「褒めてないよね?」


「間違いなく褒めてません。」


湊も笑った。が、すぐにその笑顔を納めると


「条件があります。」


と言い出した。


「条件?」


「一曲だけ。」


「え?」


「本当に一曲だけ、それが限界だと思うから。」


「いや、それ私に言われても・・・。」


和那が困惑の表情で神崎を見ると


「わかった、それでいい。じゃ、行くぞ。」


そう言って、神崎は立ち上がった。
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