元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~
「昨日、凄かったね。」
「お前、プロのミュ-ジシャンだったのかよ。」
矢継ぎ早に話し掛けられて、目を白黒させている湊。そんな情景を、和那はやや啞然としながら、眺めていた。それでも始業のチャイムが鳴り、朝礼を経ると、オフィスはいつも空気を取り戻した。ただひとり、和那を除いて。午前中、彼女はほとんど仕事に集中できなかった。気が付けば、湊を見ていた。
彼は普通に業務をしている。資料をまとめて、修正を確認して、昨日、あの状況で、大観衆の前でベースを弾いていた人間とは思えないくらい、普通だった。
やがて
「南澤さん。」
彼がデスクにやって来た。
「何?」
ぶっきらぼうな口調になっているのが、自分でもわかった。
「修正版の確認をお願いします。」
湊がそう言って、手に持っていた資料を差し出す。いつもの声、いつもの態度・・・和那は数秒、その顔を見つめたあと
「面談室。」
「えっ?」
「来て。」
そう言うと、驚いている湊と周囲を尻目に、資料を手にデスクを離れた。そのまま足早に面談室に入り、憮然とした表情を隠さないまま、湊を待っていると、本当におずおずといった様子で彼が現れた。
「あのう・・・。」
「座って。」
「・・・はい。」
ここで和那と会話を交わして、ほぼ怒られた記憶しか残っていないことに加え、今、目の前に座っている上司がなぜ、ご機嫌斜めなのかが、とんと見当もつかず、湊は困惑の表情を隠せない。
一方、和那は、机に置いた資料を見るふりをしながら、感情を整理しようとしていた。でも・・・無理だった。
「お前、プロのミュ-ジシャンだったのかよ。」
矢継ぎ早に話し掛けられて、目を白黒させている湊。そんな情景を、和那はやや啞然としながら、眺めていた。それでも始業のチャイムが鳴り、朝礼を経ると、オフィスはいつも空気を取り戻した。ただひとり、和那を除いて。午前中、彼女はほとんど仕事に集中できなかった。気が付けば、湊を見ていた。
彼は普通に業務をしている。資料をまとめて、修正を確認して、昨日、あの状況で、大観衆の前でベースを弾いていた人間とは思えないくらい、普通だった。
やがて
「南澤さん。」
彼がデスクにやって来た。
「何?」
ぶっきらぼうな口調になっているのが、自分でもわかった。
「修正版の確認をお願いします。」
湊がそう言って、手に持っていた資料を差し出す。いつもの声、いつもの態度・・・和那は数秒、その顔を見つめたあと
「面談室。」
「えっ?」
「来て。」
そう言うと、驚いている湊と周囲を尻目に、資料を手にデスクを離れた。そのまま足早に面談室に入り、憮然とした表情を隠さないまま、湊を待っていると、本当におずおずといった様子で彼が現れた。
「あのう・・・。」
「座って。」
「・・・はい。」
ここで和那と会話を交わして、ほぼ怒られた記憶しか残っていないことに加え、今、目の前に座っている上司がなぜ、ご機嫌斜めなのかが、とんと見当もつかず、湊は困惑の表情を隠せない。
一方、和那は、机に置いた資料を見るふりをしながら、感情を整理しようとしていた。でも・・・無理だった。