元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~
昼休み。


和那は改めて、湊と話をしようとしたが


「昨日の話、もっと聞かせろよ!」


「サイン下さい!」


彼は同僚たちに、拉致されるように連れ出されてしまい、その光景をため息混じりに見送るしかなかった。仕方なく、自分も昼食を調達しようと、オフィスを出ようとすると


「和那さん、神崎様という方から、お電話が入ってます。」


後輩に呼び止められる。神崎という名前に心当たりがなく、一瞬眉をひそめた和那だったが、すぐにハッと気が付くと、慌てて受話器を取った。


「お電話、替わりました。南澤です。」


『「STILL BLUE」の神崎です。』


やはり、そうだった。


「神崎さん。昨日はお疲れ様でした、ありがとうございました。」


『こちらの方こそ、昨日はバタバタして、キチンとご挨拶も出来ず、それでこうしてお電話させてもらいました。南澤さん、昨日の俺たちのパフォ-マンスは、あなたがいなければ、成立しなかった。ありがとうございました。』


「いえ、そんなことは・・・。」


『湊は俺が説得しただけじゃ、絶対に昨日弾くことはなかった。』


神崎の言葉に、和那は息を呑んだ。


『それで、奴は今日、ちゃんとそちらに伺ってますか?』


「はい。」


『それなら安心した、勝手に消えてなくてよかったです。それじゃ失礼します・・・。』


「待って下さい!」


電話を切ろうとする神崎に、和那は慌てて呼び掛ける。


「彼は・・・湊はなんで帰って来たんですか?」


『どういう意味ですか?』


「昨日、湊は自分の居場所を、自分のいるべき場所を、自分が本当に居たかった場所を、ようやくまた見つけたはずなんです。なのに・・・今日の彼はあまりにもこれまで通りで・・・これまで通りの朝比奈湊なんです。なんでなんですか?」
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