元プロバンドマンの部下は、私に気づかない~まさかの再会オフィスラブ~
「そんな彼が、何の因果か、音楽フェスの案件に関わることになって・・・。最初は本当に嫌そうにしてた、でもだんだん本気になって来てくれて、私たちじゃわからないようなプロの視点からの意見も言ってくれるようになって。嬉しかったし、頼もしかった。そして、本番当日、まさかのアクシデントでミュ-ジシャンとして、舞台に立つことになって・・・。カッコよかったよ、本当に。ああ。この人はやっぱりこの舞台に立ってるべきだったんだなって、仕事忘れて見惚れてた。」


「ナミ・・・。」


「彼は帰るべき場所を見つけた。全然寂しくなかったと言ったらウソだけど、これでよかったんだと思う気持ちの方が、全然大きかった。だから笑顔で、彼を見送ろうって思ってたんだ。でも・・・翌日からも、彼は私の部下のまま。会社を辞めようとするそぶりすらない。そんな彼がわからなくてさ・・・今日、みんなとのセッションに来てみたのも、自分で久しぶりに弾いてみれば、少しは彼の気持ちがわかるかもしれないって思ったからなんだ。」


「それでわかったの?」


「全然。今日、このメンツでやれたっていうのもあったけど、とにかく楽しくてさ。さっきのライブの話だって、現実には出来っこないけど、もしあのまま、本当にみんながやろうって盛り上がったら、私も絶対に賛成してたもん。」


そう言って笑った和那は


「でも、現実の私たちにやっぱり無理。それぞれ仕事も生活もあるし、そもそもそんな力、どこにもないから。でもさ、湊にはそれが出来る。彼は自らの力でそれを証明したんだよ。私は知らなかったけど、ネットの話だって、湊は自分のことだもの。きっと気付いてるはず。ベーシストとしてのニーズがあるって知ってるはずなんだよ。なのに・・・私には彼の気持ちが、全然わからない。」


まくしたてるように続けると、1つため息をついた。
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