《TwilightNotes ― 夜明けに鳴る音》
Scene11「渡せないページ」
次の日の放課後。
ふたりは、いつものように音楽室にいた。
麻里奈がピアノの前でコードを軽く鳴らし、
大和はギターケースを開いたまま、所在なげに楽譜をいじっている。
カバンの奥には、昨夜必死に書き上げた歌詞ノート。
けれど朝からずっと――渡せずにいた。
「ねぇ、昨日さ。あのメロディに合いそうな言葉、思いついた?」
麻里奈の何気ない一言に、大和の指がぴたりと止まった。
「……うん、一応。書いてみたけど」
「ほんと!? 見せてよ!」
ぱっと顔を輝かせる麻里奈。
その笑顔に、大和はほんの一瞬視線を伏せて――ゆっくり首を横に振った。
「……まだ、ダメ」
「え?」
「なんか……恥ずかしい。上手くないし。
もうちょっと、ちゃんと書きたい」
どこか言い訳みたいな声。
でも、その響きはまっすぐで、不器用なほど素直だった。
麻里奈は少し驚いた顔をしたあと、ふわっと微笑む。
「そっか……うん、いいよ。
大和くんが“これだ”って思えるまで待ってる」
その何気ない言葉が、驚くほど優しく胸に落ちる。
責めるでも、急かすでもなく――ただ信じてくれる。
大和は思わず視線をそらした。
「……ごめん。期待させといて」
「期待してるよ? でもね、急かしてるわけじゃないの。
“大和くんのペース”でいいと思う。
だって――私たちの歌なんだから」
“信じられている”って、こんなにあたたかいんだ。
胸の奥がきゅっと熱くなって、言葉が続かなかった。
そのあと、ふたりはいつものようにピアノを囲み、
コードを合わせ、鼻歌でメロディを確かめ合う。
けれど、大和のカバンの中の歌詞ノートは――
その日も、最後まで開かれることはなかった。
――それでも。
ノートのページの中で、言葉たちは静かに息をしていた。
麻里奈に届くその日を、ただ、待ちながら。
ふたりは、いつものように音楽室にいた。
麻里奈がピアノの前でコードを軽く鳴らし、
大和はギターケースを開いたまま、所在なげに楽譜をいじっている。
カバンの奥には、昨夜必死に書き上げた歌詞ノート。
けれど朝からずっと――渡せずにいた。
「ねぇ、昨日さ。あのメロディに合いそうな言葉、思いついた?」
麻里奈の何気ない一言に、大和の指がぴたりと止まった。
「……うん、一応。書いてみたけど」
「ほんと!? 見せてよ!」
ぱっと顔を輝かせる麻里奈。
その笑顔に、大和はほんの一瞬視線を伏せて――ゆっくり首を横に振った。
「……まだ、ダメ」
「え?」
「なんか……恥ずかしい。上手くないし。
もうちょっと、ちゃんと書きたい」
どこか言い訳みたいな声。
でも、その響きはまっすぐで、不器用なほど素直だった。
麻里奈は少し驚いた顔をしたあと、ふわっと微笑む。
「そっか……うん、いいよ。
大和くんが“これだ”って思えるまで待ってる」
その何気ない言葉が、驚くほど優しく胸に落ちる。
責めるでも、急かすでもなく――ただ信じてくれる。
大和は思わず視線をそらした。
「……ごめん。期待させといて」
「期待してるよ? でもね、急かしてるわけじゃないの。
“大和くんのペース”でいいと思う。
だって――私たちの歌なんだから」
“信じられている”って、こんなにあたたかいんだ。
胸の奥がきゅっと熱くなって、言葉が続かなかった。
そのあと、ふたりはいつものようにピアノを囲み、
コードを合わせ、鼻歌でメロディを確かめ合う。
けれど、大和のカバンの中の歌詞ノートは――
その日も、最後まで開かれることはなかった。
――それでも。
ノートのページの中で、言葉たちは静かに息をしていた。
麻里奈に届くその日を、ただ、待ちながら。