《TwilightNotes ― 夜明けに鳴る音》

Scene13「君がくれた答え」

 放課後の音楽室。
 いつもなら麻里奈と並んで練習しているはずなのに、その日は彼女の姿がなかった。

 机の上には、置きっぱなしのノート。
 そのページの上に、小さな付箋が貼られている。

 「先に帰ります! このページ、見てくれたらうれしいな」



 少し跳ねた字。
 まるで本人がそこで笑っているみたいで、大和の口元にも自然と笑みが浮かんだ。

 ゆっくりノートを開く。
 そこには歌詞構成用紙――
 そして、丁寧に並んだ麻里奈の歌詞。


 
 あなたの声が ふと胸を揺らしたの
 何気ない言葉の中に あふれてた

 強がりのその笑顔も 遠く見つめる
 まなざしも
 本当は誰かを 想っていたんだよね

 届いてるよ その想いも
 言葉にできなくても
 ちゃんとここに 響いてる
 わたしには 聞こえてるよ



 読み進めた瞬間、大和の胸の奥がふっとほどけた。

 いつも隠してしまう想い。
 誰にも言えなかった“本音”。
 自分でさえうまく言葉にできなかった気持ちを――
 麻里奈は、こんなにもやさしく受け取ってくれた。

 「……なんだよ、これ」

 こぼれた声は、少し震えていた。
 照れくさくて、でもあたたかくて。

 「完敗だわ。俺のより、ずっとちゃんとしてるじゃん……」

 ページの端をそっと指でなぞる。
 ここにあるのは、麻里奈の“声”。
 あの夕暮れに交わした、たった一言を――
 ちゃんと返してくれた答え。

 (これが、歌になるんだ)

 ふたりで作る、最初の歌。
 “君となら”って思えたあの気持ちが、確かに形になっていく。

 大和は静かにギターケースを開き、弦をひとつずつ確かめながらチューニングを始めた。
 弾き始めたその音は、空の音楽室にやさしく満ちていく。

 そこに――ふたりの歌が生まれ始めていた。

 
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