《TwilightNotes ― 夜明けに鳴る音》

Scene14「ふたりのページ」

 次の日の放課後。
 麻里奈は音楽室の前で、扉に触れた手をそっと止めた。

(……ちゃんと、読んでくれたかな)

 昨日、大和に渡したノート。
 あのページに書いたのは、彼の歌詞に応えるように紡いだ自分の“言葉”だった。

 「変だったかな」「伝わりすぎたらどうしよう」
 そんな不安が胸の奥でずっと渦巻いて、昨日は顔を合わせる勇気が出なかった。

 でも――今日こそ。

 深呼吸をひとつ。
 意を決して扉を開ける。

 音楽室には、すでに大和がいた。
 ギターのチューニングをしていた手を止め、こちらを見つめる。

「……よ」

 それだけ。
 でも、昨日とは違うやわらかい声で、麻里奈は自然と笑みをこぼした。

「……読んだ?」

 おそるおそる問いかけると、大和は小さく頷く。

「読んだ。……てか、なんだあれ。反則すぎるだろ」

「えっ?」

「俺の気持ち、全部見透かされてんじゃん。
 しかも、ちゃんと返されてるし。……完敗すぎて笑った」

 言い終えると同時に、ギターの弦を軽くぽろんと鳴らす。

「でも……嬉しかった。素直に」

 その一言で、麻里奈の胸にじんわり熱が灯った。

「……じゃあ、あとは一緒に書こうよ。最後のフレーズ、まだ空いてるし」

「……うん」

 ふたりは机に並んで座る。
 開かれたノートには、大和のフレーズ、麻里奈のフレーズ、そして――まだ白いままの1ページ。

「サビの最後、“君に届くように”って入れたい」

「……いいね。あの日の言葉だ」

「うん。私も、“君となら、きっと”って入れたかった」

 ふたりの声が、ゆっくりと重なっていく。
 ギターの音と、ピアノのコード。
 文字になった言葉と、音になった想い。

 すべてが、少しずつ混じり合い、重なり合って――

 “ふたりの歌”は、ようやく完成へと近づいていた。

 
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