《TwilightNotes ― 夜明けに鳴る音》

Scene16「リズムを、君と重ねて」

 体育館のステージ裏。
 放課後の薄暗い照明の中、Bluetoothスピーカーから小さくイントロが流れ始める。

「ここ。四つ数えてターンして、そのまま前にステップ……そう、それ」

 大和の声は、いつもより少しやさしい。

 麻里奈は真剣な表情で、大和の動きを真似ていた。
 額には汗がにじみ、タイミングはほんの少しずれる。

「くっ……待って、もう一回!」

「焦んなくていい。最初から合わせよう」

 大和はそう言って、初めの立ち位置に戻る。

 ふたりは向かい合い、手を軽く合わせる振りからスタート。
 そこから交差して、一緒にターン――のはずが。

「……あ、ごめん! また反対向いちゃった!」

「方向違ってる。左足先。……ちょっといい?」

 大和がそっと近づいてくる。
 麻里奈の手首を包み、足の位置を直す。

「こう。……ゆっくりでいいから、感覚で覚えて」

 途端に、息が止まりそうになる距離。
 近くで見る大和の横顔は、思っていたよりも真剣で、思っていたよりも優しかった。

「……うん。やってみる」

 音楽が再び流れる。
 さっきより動きが自然につながった。ほんの少しだけど、確かに。

「……お、今の、いいじゃん」

「ほんと? やった!」

 麻里奈が嬉しそうに笑うと、大和はわずかに照れたようにうなずいた。

「……ダンス、楽しいかも」

「だろ?」

 ステージの床に、ふたりの影が並ぶ。
 まだ完璧じゃない。でも、確実に合ってきている。
 リズムも、気持ちも。

 音が止み、スピーカーが静かになる。

「もう一回、最初からやろう?」

「……おう。何回でも付き合うよ」

 その言葉に、麻里奈は嬉しそうに目を細めた。

 本番はまだ先。
 でも――この時間が続けばいいと思った。

 同じ音に乗り、同じ動きを刻む。
 リズムの先で、ふたりの“気持ち”が静かに重なっていく。

 ――このステージが終わったとき、どんな景色が待っているんだろう。

 
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