《TwilightNotes ― 夜明けに鳴る音》

Scene15 「届かない言葉」

 天井を見上げたまま、大和は長く息を吐いた。

 机の上には、あの日――麻里奈と書き始めた歌詞ノートが置きっぱなしになっている。
 文化祭のあと、ひとりで書き足した言葉も、今となってはどこか遠い記憶のように霞んで見えた。

「……どうして、話せなかったんだろうな」

 自分に投げたその呟きは、空気に吸い込まれて消えるだけだった。

 言い訳なら、いくらでもできた。
 榊と話していた麻里奈を見て、勝手に誤解して。
 自分の気持ちをごまかして。
 結局、何も言えなかった。

(……俺、最低だ)

 スカウトを受けたとき、「夢だったんだろ?すげぇじゃん!」と仲間は笑ってくれた。
 だが、大和の胸の奥はなぜかずっと沈んだままだった。

 ――あいつにだけは、ちゃんと話したかった。

 スカウトのことも。
 麻里奈の前で強がって、意地を張ってしまったことも。
 あの日、涙をこらえて自分を見つめていた彼女の表情も。
 全部、胸の奥に刺さったままだった。

(……本当はさ)

 ノートのすみに、自分の字で書かれた小さな一文がある。

 君となら、きっと届くと思った。

 その言葉に触れた瞬間、大和はそっとページを閉じた。
 震える指先が、気持ちの行き場のなさを物語っていた。

「……麻里奈」

 名前を呼んだ途端、ぽたりと涙が落ちた。

 枕に顔を埋め、声を殺して泣く。
 強がりも、臆病さも、優しさも――
 全部ひっくるめて、情けなくてたまらなかった。

(ごめん。ちゃんと話せばよかった。
 俺……ただ、怖かっただけなんだ)

 遠ざかっていく声。
 遠ざかっていく想い。

 もう一度、あの日の笑顔に触れられる日は――
 果たして来るのだろうか。

 
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