《TwilightNotes ― 夜明けに鳴る音》

Scene5「放課後、秘密の場所」

 放課後の体育館に、オレンジ色の光が満ちていた。
 夕日が床を染め、風がカーテンをゆらすたび、光の粒がふわりと舞う。

 麻里奈は、そっとドアの陰から中を覗き込んだ。
 誰もいないと思っていたその場所で、大和が音楽に合わせて踊っていた。

 その姿を見た瞬間、息が止まった。
 動きは滑らかで、表情は真剣で――まるで音楽そのものと一体になっているようだった。

(あの時間が、好きだった。
 気づけば、今日も足が勝手に体育館へ向かっていた。
 大和くんに会いたい――そんなふうに思っている自分を、少し苦笑してしまう。)

 最初は、ただの興味だった。
 無口で、何を考えているのかわからない、不思議なクラスメイト。
 だけど、あの日、ひとりで踊っていた姿を見てから――
 私は彼のことを“目で追う”ようになった。

 怖いくらい真剣で、美しくて。
 胸の奥が、ぎゅっと締めつけられるような感覚に包まれた。

(あのときから、私は彼の“秘密”を少しだけ知ってしまった気がした。
 そして、そっと寄り添いたくなった。
 誰にも言えない夢を抱えている、その背中を、応援したくなった。)

 気づけば、いつも放課後になるとここに来ていた。
 大和の踊る音と呼吸のリズムが、知らぬ間に日常の一部になっていた。

(……これって、なに?
 別に、“好き”とか、そんな簡単な言葉じゃない。
 でも、彼のひとことに笑って、沈黙ひとつに胸が騒いで――
 帰り道、何度も思い出している。)

 照れ隠しみたいにそっけなく笑う彼の横顔。
 その笑顔を見るたび、麻里奈の胸の奥が、静かに熱を帯びていく。

 ――気づけば、彼はもう、私の中で大きな存在になっていた。
 
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