《TwilightNotes ― 夜明けに鳴る音》
Scene11 その服、誰が選んだの?
撮影スタジオの控えスペース。
照明のセッティングや機材チェックの音が混じり合い、スタッフたちのざわめきが絶えない。
その中を、麻里奈はゆっくりと歩いていた。
目は覚めているはずなのに、頭の奥がまだ霞んでいる。
足元が少し不安定で、ふらつきそうになるのを、必死にこらえながら。
「……麻里奈さん?」
スタジオの扉をくぐった瞬間、声がした。
そこに立っていたのは、大和だった。
彼は一瞬、言葉を失ったように目を見開き、麻里奈を見つめる。
「……おはようございます」
反射的に微笑み、軽く会釈をする。
けれど、大和の表情はすぐには緩まなかった。
ゆっくりと距離を詰めてきて、少しだけ声を落とす。
「昨日……ちゃんと帰れた?
かなり酔ってたみたいだったから……」
「……うん。ありがとう。
ちょっと、飲み過ぎちゃっただけ」
「……ほんとに?」
その一言が、ほんのわずかに低くなる。
大和の視線が、自然な流れで麻里奈の服へと落ちた。
――その瞬間、空気が変わった。
「その服……なんか、いつもと雰囲気ちがうね」
「え?」
「……いや、似合ってるけど。
ただ……誰かに、選んでもらったのかなって」
心臓が、どくんと大きく跳ねた。
麻里奈の指先が、無意識にスカートの裾をきゅっと握りしめる。
「……ちょっと、ね。
朝、バタバタしてて……自分じゃ選べなくて」
苦し紛れの言葉だった。
大和は何か言いかけて、息を吸い――
けれど、そのまま口を閉じた。
その瞳には、
何かに気づいてしまったような、
それでも確かめたくないような――
複雑な揺れが浮かんでいる。
「……そうなんだ。
無理、しないでね」
それだけを残し、大和はゆっくりと控室の方へ歩き出した。
麻里奈は、その背中をただ見つめていた。
喉の奥が、きゅっと締めつけられる。
――さっきまで身につけていた服よりも、
ずっと重たい“何か”を、
自分は今、着せられている気がして。
照明のセッティングや機材チェックの音が混じり合い、スタッフたちのざわめきが絶えない。
その中を、麻里奈はゆっくりと歩いていた。
目は覚めているはずなのに、頭の奥がまだ霞んでいる。
足元が少し不安定で、ふらつきそうになるのを、必死にこらえながら。
「……麻里奈さん?」
スタジオの扉をくぐった瞬間、声がした。
そこに立っていたのは、大和だった。
彼は一瞬、言葉を失ったように目を見開き、麻里奈を見つめる。
「……おはようございます」
反射的に微笑み、軽く会釈をする。
けれど、大和の表情はすぐには緩まなかった。
ゆっくりと距離を詰めてきて、少しだけ声を落とす。
「昨日……ちゃんと帰れた?
かなり酔ってたみたいだったから……」
「……うん。ありがとう。
ちょっと、飲み過ぎちゃっただけ」
「……ほんとに?」
その一言が、ほんのわずかに低くなる。
大和の視線が、自然な流れで麻里奈の服へと落ちた。
――その瞬間、空気が変わった。
「その服……なんか、いつもと雰囲気ちがうね」
「え?」
「……いや、似合ってるけど。
ただ……誰かに、選んでもらったのかなって」
心臓が、どくんと大きく跳ねた。
麻里奈の指先が、無意識にスカートの裾をきゅっと握りしめる。
「……ちょっと、ね。
朝、バタバタしてて……自分じゃ選べなくて」
苦し紛れの言葉だった。
大和は何か言いかけて、息を吸い――
けれど、そのまま口を閉じた。
その瞳には、
何かに気づいてしまったような、
それでも確かめたくないような――
複雑な揺れが浮かんでいる。
「……そうなんだ。
無理、しないでね」
それだけを残し、大和はゆっくりと控室の方へ歩き出した。
麻里奈は、その背中をただ見つめていた。
喉の奥が、きゅっと締めつけられる。
――さっきまで身につけていた服よりも、
ずっと重たい“何か”を、
自分は今、着せられている気がして。