《TwilightNotes ― 夜明けに鳴る音》

Scene12 ふたりの沈黙

 どうして――そんなふうに見るんだろう。
 
 麻里奈は、胸の奥がきゅっと締めつけられるのを感じながら、大和の視線を受け止めていた。
 ただ、いつもと違う服を着ているだけなのに。
 それだけで、彼の目が少しだけ揺れた気がして――それが、怖かった。
 
 好きで選んだわけじゃない。
 似合うかどうかなんて、考える余裕もなかった。
 
 言えばよかったのかもしれない。
 今朝、光輝の家から出てきたこと。
 でも、何もなかったこと。
 ただ、飲みすぎて――それだけだったこと。
 
 けれど、言葉は喉の奥で引っかかったまま、外に出てこなかった。
 
 もし、信じてもらえなかったら。
 もし、あの優しかった目が、また冷たくなったら。
 
 それを想像しただけで、胸の奥がひび割れそうだった。
 きっと私は――もう、耐えられない。
 
 一方で、大和は何も言わず、ただ彼女の姿を目に焼きつけていた。
 
 その服を、誰が選んだのか。
 そんなこと、口にしなければ平気なはずなのに――
 実際に目にしてしまうと、心の奥がざわついて、どうしても落ち着かなかった。
 
 昨夜送ったメッセージ。
 返事がなくて、眠れなかった夜。
 朝になって届いたのは、「大丈夫です」という、たった一言。
 
 本当に、それだけなのだろうか。
 
 信じたい。
 信じていたい。
 
 それなのに、頭のどこかで、どうしても浮かんでしまう。
 あの人と、何かあったんじゃないか――そんな考え。
 
 疑ってしまう自分が、いちばん嫌いなのに。
 それでも、目は彼女から離れなかった。
 
 気になって仕方ない。
 放っておけるわけがない。
 
 けれど、踏み込めば壊れてしまいそうで――
 ふたりは、何も言えないまま、沈黙の中に立ち尽くしていた。
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