《TwilightNotes ― 夜明けに鳴る音》
Scene13 沈黙の視線とささやき
スタジオの空気は、張り詰めていた。
照明が灯り、スタッフの指示が飛び交う中――
大和はカメラの前に立ち、真っ直ぐにレンズを見据えている。
その姿を、モニター越しに見つめながら、麻里奈はファイルを胸に抱きしめた。
呼吸が、知らず浅くなる。
ステージに立つ彼は、やはり別の顔をしている。
迷いも不安も、すべて飲み込んだような表情で。
――どうして、こんなにも目を離せないのだろう。
その瞬間、背後から、ふわりと香水の匂いが流れ込んできた。
「その服、とっても似合ってるよ」
耳元で、低く、やわらかく。
吐息がかかるほど近い距離で囁かれ、麻里奈の肩がわずかに揺れた。
振り返ると、光輝が立っていた。
穏やかな笑み。けれど、その瞳の奥には、感情の温度がない。
言葉よりも、その視線のほうが――はっきりと“何か”を主張していた。
「……ありがとうございます」
反射的に答えた声は、思った以上に掠れていた。
どうして、今。
なぜ、このタイミングで。
“似合っている”という言葉が、
今朝、自分の意思とは無関係に選ばされた服の感触を、
首元に残る鎖のように思い出させる。
香りが遠ざかっても、
光輝の存在感だけが、背中に張りついたまま離れなかった。
そして――ふと、視線を前に戻すと。
撮影の合間、大和がこちらを見ていた。
一瞬だけ、視線が重なる。
言葉はない。けれど、その目は、確かに揺れていた。
心配しているのか。
それとも、何かに気づいてしまったのか。
見ないでほしい。
そう願ったのに、目を逸らすことができなかった。
その瞳が、まるで「大丈夫?」と問いかけてくるようで――
胸の奥が、きゅっと締めつけられる。
気づけば、視界の端がわずかに滲んでいた。
涙が落ちる前に、麻里奈はぎゅっと唇を噛みしめる。
誰にも、気づかれないように。
この沈黙だけは、壊さないように。
照明が灯り、スタッフの指示が飛び交う中――
大和はカメラの前に立ち、真っ直ぐにレンズを見据えている。
その姿を、モニター越しに見つめながら、麻里奈はファイルを胸に抱きしめた。
呼吸が、知らず浅くなる。
ステージに立つ彼は、やはり別の顔をしている。
迷いも不安も、すべて飲み込んだような表情で。
――どうして、こんなにも目を離せないのだろう。
その瞬間、背後から、ふわりと香水の匂いが流れ込んできた。
「その服、とっても似合ってるよ」
耳元で、低く、やわらかく。
吐息がかかるほど近い距離で囁かれ、麻里奈の肩がわずかに揺れた。
振り返ると、光輝が立っていた。
穏やかな笑み。けれど、その瞳の奥には、感情の温度がない。
言葉よりも、その視線のほうが――はっきりと“何か”を主張していた。
「……ありがとうございます」
反射的に答えた声は、思った以上に掠れていた。
どうして、今。
なぜ、このタイミングで。
“似合っている”という言葉が、
今朝、自分の意思とは無関係に選ばされた服の感触を、
首元に残る鎖のように思い出させる。
香りが遠ざかっても、
光輝の存在感だけが、背中に張りついたまま離れなかった。
そして――ふと、視線を前に戻すと。
撮影の合間、大和がこちらを見ていた。
一瞬だけ、視線が重なる。
言葉はない。けれど、その目は、確かに揺れていた。
心配しているのか。
それとも、何かに気づいてしまったのか。
見ないでほしい。
そう願ったのに、目を逸らすことができなかった。
その瞳が、まるで「大丈夫?」と問いかけてくるようで――
胸の奥が、きゅっと締めつけられる。
気づけば、視界の端がわずかに滲んでいた。
涙が落ちる前に、麻里奈はぎゅっと唇を噛みしめる。
誰にも、気づかれないように。
この沈黙だけは、壊さないように。