《TwilightNotes ― 夜明けに鳴る音》

Scene6「帰り道、夜風と笑い声」

 スタジオの外に出ると、夜風がふっと二人の頬を撫でた。
 空には淡い月。高揚した心をそっと冷ましてくれる、ちょうどいい夜だった。

「やばい……あんなに踊ったのに、全然疲れてない」

 麻里奈はふにゃっと笑いながら、大和の隣を歩く。

「わかる。むしろテンション上がって、眠れなさそう……!」

「ね、ね! 最後のサビ前のステップ見た!?
 私、たぶん今日、人生で一番カッコよかった自信ある!」

「うん、カッコよかった。いや、マジで。途中から完全に“アーティスト・MARI”だった」

 大和の真顔の称賛に、麻里奈は思わず肩をぶつけた。

「なにその言い方〜。ちょっと恥ずかしいんだけど!」

「だって本当のことだし。……あ、でも仮面つけてるから言えるのかもな」

「え?」

「……いや、なんでもない」

 照れたように前を向いた横顔が、街灯に照らされてやわらかく浮かび上がる。
 その表情が妙に大人びて見えて、麻里奈は一瞬だけ言葉を失った。

 信号で立ち止まり、二人並んで赤を待つ。
 沈黙の中にも、さっきまでの音と光の余韻が、まだふわりと残っていた。

「ねぇ……次はMVじゃなくて、ライブしてみたくない?」

 唐突な麻里奈の言葉に、大和が目を丸くする。

「ライブ?」 「うん。生で……このワクワクを、誰かと分かち合いたいなって。もちろん、仮面のままで」

 信号が青に変わる。

「やろう。絶対、やろう」

 迷いのないその返事が背中を押して、麻里奈は思わず小さくスキップした。

「え、今のなに!?」 「スキップだけど!?」 「子どもかっ!」

 笑いながら大和が麻里奈の腕を引き寄せ、二人はふざけ合うように夜の歩道を進んでいく。
 すれ違う人たちの視線も、もう気にならなかった。

(ねぇ、大和。今なら、言えそうな気がする)

 でもその言葉は、まだ胸の奥にしまったまま。
 代わりに、ほんの少しだけ、彼との距離を縮めた。

 夜風の中で重なる足音が、
 これから始まる“何か”を、静かに予感させていた。
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