《TwilightNotes ― 夜明けに鳴る音》

Scene7「はじまりの名前」

 次の日の昼休み。
 ざわめく教室の中で、麻里奈は少しだけ勇気を出して、大和の席の横に立った。

「ねぇ、大和くん。お昼、一緒に食べてもいい?」

「……うん」

 驚いたように顔を上げたあと、大和は静かにうなずいた。
 それだけで、胸の奥がふわっとあたたかくなる。

 ふたりで窓際の端の席に並ぶ。
 パンの袋を開ける音、紙パックを開ける小さな音――
 まわりの笑い声がどこか遠くにかすんで、ここだけ時間がゆっくり流れているようだった。

「……でさ、文化祭。ユニットの名前、もう考えた?」

 不意の問いに、麻里奈は目を丸くする。

「え、名前? ……そんなの、まだ全然!」

「俺、ちょっと考えてみたんだけど」

 そう言って、大和はノートの端を破り、小さく折った紙を差し出した。

「なにこれ?」

「候補っていうか……仮」

 そっと開くと、少し乱れた字でこう書かれていた。

《Twilight Notes》

「……トワイライト?」

「夕方の放課後、音楽室。……だいたい俺たち、いつもそこで練習してるだろ?」

 その言葉に、思わず笑ってしまった。
 ちゃんと見てくれていたんだ――あの放課後を。

「……いい名前。すごく好き」

 大和は照れたように目をそらす。

「なら、決まりだな」

「うん。“Twilight Notes”、ふたりのはじまりにぴったりだね」

 窓の外で、春の光がきらめいた。
 まだ何も形になっていない未来が、ほんの少し輪郭を持ち始める。
 リズムも、メロディも、歌詞も、全部これから――

 でも、それでもきっと大丈夫。
 君となら、きっと。
 
< 8 / 48 >

この作品をシェア

pagetop