日本語が拙い外国人と恋仲になりました

 私の心臓が、一気に早鐘を打った。
 すぐに電話に出て、もう一度聞きたい声を求めて口を開いた。

「も……もしもし」
『喂,ムラオカさん!』

 彼の焦った声が聞こえてきた。
 遊歩道で立ち尽くす男性も、電話で話している。
 居てもたってもいられず、私はすっと立ち上がった。

『外滩着きました。アナタはどこにいる』
「後ろ」
『啊?』
「チョウさん、後ろを振り返って」

 私がそう言うと、遊歩道に立っていた男性はふっとこちらを振り返った。
 たくさんの人たちで溢れる外滩。その中に紛れながら、私は片手を高く挙げ、大きく手を振った。

「チョウさん。私はここにいます」

 男性は──チョウさんは、私と目がばっちり合うと、満面の笑みを浮かべた。手を振り返し、観光客たちをかき分けながら私のところへ駆け寄ってきた。

『見えた。よく見えました、ムラオカさん』

 嬉しそうな声が、電話の向こうと目の前の声で重なる。
 間違いなく、チョウさんだ。チョウさんが、すぐ目の前にいる。
 やっと。やっと会えた。喜びのあまり目尻が熱くなった。
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