日本語が拙い外国人と恋仲になりました

23・過去を打ち明ける

 チョウさんの心臓の鼓動が伝わってくる。ドクドクと、速いテンポでリズムを刻んでいた。その音色が、なんとも心地がいい。

「あ、あの。ムラオカさん……」

 チョウさんの震えた声を聞いてハッとした。
 やば。やっちゃった。
 感極まり、勢いに任せて抱きついてしまった。何をやってるの私は!

 羞恥心に襲われ、パッと彼の身から離れた。
 私の全身にはまだまだ優しいぬくもりや香りが残っている。
 どうしよう。ドキドキが止まらない。

 周囲にはたくさんの人たちがいるのに。きっと色んな人に見られたよね。
 もう恥ずかしすぎて、周りなんか見てられない。だからと言って、チョウさんと目を合わせるのも照れてしまう。
 どうしようもなく、私はうつむき加減になった。

 慌てふためく私に対し、チョウさんはサッと両手を差し出してくる。と思えば、ギュッと手のひらを握ってくれた。

 大きくて逞しい両手が、私の肌をあたためた。

「チョウさん……?」

 私はゆっくりと、視線を上に向ける。彼は温和に包まれた瞳でこっちを見つめていた。
 ドキドキ、ドキドキと、私の心拍はもう限界に近づいている。誰かに対して、こんなに胸がときめいたのは久しぶり……ううん、初めてかもしれない。

「ムラオカさん」 
「は、はい」
「ワタシは分かった。またアナタに会えて、とても幸せになりました。ワタシは今もあなたを愛している。自分の気持ちは変えられない。いいですか?」

 その優しい表情、真剣な眼差し、ギュッと握ってくれる大きな手。チョウさんの想いが、私の心の奥までよく届いた。
 純粋で素直で、なにごとに対しても一生懸命な彼が大好き。私もその想いに答えたい。
 でも……
 彼に伝えなきゃいけないことがある。
 私はおもむろに、彼の手をほどいた。
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