日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 先ほどよりも更に彼のぬくもりが感じられて、心地がいい。反面、緊張の方が今はだいぶ勝っていて。
 なにこれ。どういう状況?

「チョウさん……?」
「ワタシはその男を許すことができない! 奥さんと子供に悪いことをしている。何よりもアナタが傷ついた。ムラオカさんはとても素敵な女性です。悪い男は忘れてほしい」

 怒り口調でありながらも、チョウさんの声はどこか悲しげだった。
 彼の反応が意外で、私は戸惑ってしまう。

「私には、怒らないんですか?」
「啊?」
「私……気づかないうちに、不倫をしていたんですよ? 結婚してる人と、いけないことをしていたんです。汚い女だって、思いませんか」

 自分で話しながら、とても惨めになった。
 気づいていなかったとしても、不倫したことは事実。 
 チョウさんは、抱き締める力を更に強くして。耳元でこう囁くの。

「アナタの何が悪い。男が全部悪いのですよ」

 あの男が全部悪い。……頭の片隅では、私も同じ風に思っていた。
 どんなに相手が悪かったとしても。既成事実は、永遠に消えることはない。
 誰かに恋をしても、また騙されるんじゃないかって……怖くなった。
 でも。
 今、私を抱きしめてくれている人は、誰かを騙すような人に思えるの? 自問自答してみるが、答えなんて出ているでしょう。
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