日本語が拙い外国人と恋仲になりました

25・幸せを噛み締める

 チョウさんが料理の注文をし、ほどなくして私たちのテーブルには五段重ねの蒸篭が豪快に並べられた。湯気が立ち上がり、そこから広がる肉汁の香が食を誘う。口内が早く小籠包を食べたいと駄々をこねていた。

「さあ、食べてください。熱いから気をつけて。先に中の汁を吸う。それからお肉を食べるんだ」

 食べかたを教えてもらいながら、私はレンゲの上に小籠包を載せ、箸先で皮に穴を開けた。そこから溢れてくる肉汁を口に含めた途端、肉の旨味が一気に舌に広がる。熱いけれど味わい深い。
 お酢をつけてお肉を食べてみる。噛めば噛むほど味が出てほっぺが落ちそうになった。

「美味しい」

 自然とこぼれた感想。
 もしも独りでこの小籠包を食べていたら。きっと私はここまで幸せを噛み締めることはできなかっただろう。
「熱い、美味しい、熱い熱い」と言いながら箸を進めるチョウさん。彼が隣にいる、たったそれだけのことが私に幸せの味を与えてくれるんだ。
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