日本語が拙い外国人と恋仲になりました

26・離ればなれになっても

 頬を落としそうになるほど満足げな表情でチョウさんは小籠包を堪能している。
 そんな彼をじっと見つめ、私はそっと声をかける。

「チョウさん」
「はい」

 再度食事の手を止めて申し訳ないと思いつつ。ここは、しっかり話をしないといけない。

「チョウさんは、日本には戻らないんですよね?」
「ああ。それは……」

 チョウさんの目が泳いだ。それが動揺の意を表すものだと私は即座に察知する。
 箸を置き、彼は俯き加減で語り出した。

「ワタシのお母さんが死んでしまいました」
「あのメッセージ、見ました。本当に……ご愁傷様です」
「お父さんは一人になる。ワタシには兄弟がいない。家にお父さんを残すのは心配だ。だから上海に残ると思った」

 時折、声を震わせるチョウさん。とても真剣な顔つきだ。
 そっか。たしかにお父さんが一人暮らしだと心配だよね。日本に住み続けていたら、もしも何かあったときにすぐ駆けつけられないし。
 家族想いのチョウさんが素敵だと思った。と同時に、やはり彼とは住む世界が違うのだと思い知らされる。
 胸が痛い。私はなんて無慈悲な人間なのだろう。
< 122 / 172 >

この作品をシェア

pagetop