日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 夜の九時になった。十二月の上海は、東京と同じように日が暮れるとかなり冷え込む。
 チョウさんと絡み合う指先は、熱に包まれて心地がいい。

 ちょっとお洒落なお店で夕食を済ませ、チョウさんは私をホテルまで送ってくれると言った。そこまでしなくていいと伝えたけれど、彼は心配だからと結局最後まで一緒にいてくれた。

 翌朝の六時にはチェックアウトして高速バスに乗らなければならない。荷物を今日中にまとめないと……。本当はもっとチョウさんと一緒にいたい。けれど、これからのスケジュールを頭の中で整理すると、その欲は抑えないとならない。

 ホテル前で立ち止まり、私は彼の目を見つめる。話をしたいと思うのに、なかなか言葉が思いつかない。
 こういうとき、先に口を開くのはやっぱりチョウさんからだった。

「今日は楽しい時間を過ごした」

 普段どおりの、明るい口調。
 私はコクリと頷く。

「明日の飛行機は何時に乗るのか?」
「十一時半には出発です」 
「そうですか。分かりました。ワタシ、明日は空港行く。アナタを送ります」
「うん……ありがとう」

 ポツリと呟いた感謝の気持ちは、近くを走るバイクのエンジン音によって消された。
 ホテルのエントランスはすぐそこだというのに、私の手はチョウさんと繫いだまま離れない。放さない。
 ──放したくない。
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