日本語が拙い外国人と恋仲になりました

29・上海を発つ



 翌朝。出発のときが訪れた。
 早朝にも関わらず上海浦东国际空港は多くの人々が行き交う。みんな大きな荷物を持ち、時計を確認しながら急ぎ足でターミナル内を歩いていた。

 この忙しない空間の中、私は彼との最後のひとときを過ごした。保安検査場を背に彼と向き合うが、どうしても「さようなら」「またね」の一言を口にできない。ここに来て三〇分以上が経過してしまった。
 肩をすくめ、彼は眉を八の字にする。

「あの……ミキさん。時間が、なくなりませんか?」

 チラチラと腕時計を見ながらも彼は私の手を握りしめて放さない。
 私も曖昧にしか頷くことしかできなかった。

「行きたくないけど……あまり時間がないのよね」

 搭乗口まできっと距離があるだろうし、本当に時間は限られている。
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