日本語が拙い外国人と恋仲になりました
「アナタは中国へ行ったことがありますか?」
「ううん、それが実は一度もなくて。ていうか、海外へ行ったことすらないんです」
「それは、もったいない。中国は広大です。そして上海には美味しいものがたくさん」
「どうして上海?」
「ワタシは上海で生まれ育ったからです」

 そうなんだ。チョウさんって上海人なんだね。
 朗らかに語る彼の話に、私はいつの間にか夢中になっていた。

「上海の小籠包はとても美味しい。东方明珠(トウホウメイジュ)外滩(ガイタン)も美しい」
「ん……? なんだって?」
「観光することができます。夜は美しい。そして川は大きい」
「あ、上海の観光名所なんですね」
「そう。上海は素晴らしいものがたくさんある」
「へえ。一回行ってみたいなぁ」

 何気なくポロっと私が呟くと、チョウさんはさっと両手を握ってきた。

「行きましょう、ムラオカさん。ワタシが案内します!」

 生き生きと誘ってくるものだから、私はその勢いに負けてぎこちなく頷いた。

 いいなぁ。自分の生まれ育った場所が大好きなんだね。
 私は郊外の生まれでなんにもないところで育ったから、とくにおすすめできるようなものはないし、地元が特段好きってわけでもない。
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