日本語が拙い外国人と恋仲になりました

31・過去の男

 ※ ※ ※

 日曜日の夜七時。
 今日も私はシンバシホテルでバリバリ仕事をしていた。
 と言っても、サラリーマンの街に建つこのホテルは、週末の方が宿泊者が少なくて平日よりもまったりしているんだけれど。

 パソコンと睨み合い、残り三部屋となったシングルルームの料金をどこまで下げるべきか私は悩んでいた。安くすれば即予約は埋まるだろうけど、かといって料金を下げすぎてもよくない。周辺ホテルの料金とも比較しつつ、スタッフルーム内で一人頭を抱えた。

 そんなとき、室内のドアがガチャリと開いた。フロントでお客さんを対応している菅原くんが戻ってきたのかな、と思ったけれどそれは違った。

「おはよう」

 これから夜勤の林支配人が制服姿で現れた。

「支配人、おはようございます」
「今日はまだ三部屋も余ってるみたいだねぇ」

 ……さすが支配人。出勤早々、残室のことを気に掛けている。隣でパソコンを眺めながら支配人はすぐに指示をくれた。

「空室はできる限り潰したいからなぁ。九千台まで下げちゃおっか」
「大胆ですね。競合はまだ一万円台ですよ」
「いいよ。今月のノルマは達成できるから」

 まあ、支配人の言う通り、このままいけば予算の心配はないだろう。今月は前年に比べたら売り上げが順調だし。
 指示された通りに私は残室の料金を設定し直した。
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