日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 パソコン業務を続けていると、隣で支配人が腕を組んでふとこちらを向いた。どことなく困ったような顔をして、言いづらそうに口を開くの。

「村岡さん。ちょっと訊きたいことがあるんだけど」
「なんですか?」

 私は作業する手を止め、支配人と視線を合わせた。

「昨日、宿泊されたお客様の件で気になることがあってね」
「昨日ですか」

 なんだろう、私はお休みだったんだけど。まさか、また予約ミスをしちゃったかな……?
 でも、それはすぐに否定された。難しい顔をして、支配人は続ける。

「大野様という男性の宿泊客が来たんだけどね、たぶん、見た目からして三十台前半くらいかな。チェックインしたときに言われたんだよ。『このホテルに村岡さんという女性スタッフがいますよね?』って」
「……え」

 それを聞いた瞬間、私は息をするのを忘れてしまう。

「大野、ですか……?」

 意図せず声が震えた。
 三十代前半くらいの男で、大野という知り合いは一人しか思い当たらない。
 私は固唾を呑んだ。心臓がどくんどくんと唸り声を上げている。

 昨日のチェックアウト表をパソコン画面で開くと、たしかに見覚えのある名前があった。

《オオノ ワタル》

 私が過去に付き合っていた男だ。奥さんがいることを隠していた、ずるい奴──
 どうして、あの人が、ここに……?
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