日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 唖然としながら私がパソコン画面を眺めていると、支配人がおもむろに顔を覗きこんできた。

「村岡さん、大丈夫?」
「え……ああ、はい。その人、昔の知り合いで。ちょっと、驚いただけです」
「そうだったのか。ごめん、あまりスタッフの情報を漏らさない方がいいと思って、とりあえず昨日は『いません』とだけ答えたんだ。実際、お休みだったから嘘じゃないんだけどね。今日は出勤だったことは伝えた方がよかったのかな」

 支配人の言葉に、私は大きく首を横に振った。

「いえ、気を遣っていただきありがとうございます。その……もしもまた大野という人が来ても、私はいないことにしてくれませんか?」

 私がそう言うと、支配人は眉をひそめた。
 支配人は私の事情は知らない。余計なことを話したくない。
 でも、さすが大人だ。林支配人は深く訳を聞き出そうとするわけでもなく、小さく頷いた。

「分かった。それじゃあ、この名前は覚えておくね。今後もしオオノワタル様の名前で予約が入ったら村岡さんが対応しなくていいように気にかけておく。なにか困ったことがあったら遠慮なく相談するんだよ」
「はい……ありがとうございます」

 あまり迷惑かけたくないな……。
 申し訳ないと思いながら深く頭を下げた。
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