日本語が拙い外国人と恋仲になりました

35・彼のサプライズ

 大野が立ち去った。私たちの間には不自然な沈黙が流れる。道路を走る車の音が、この妙な気まずさをかき消した。

 冷静さを取り戻し、私は今更ながら恐怖を自覚することになる。とにかく逃れたい一心で抵抗したけれど、力では少しも敵わなかった。もしかすると、あのまま連れ去られていたかもしれない。
 
 彼は私をじっと見つめた。なんとも切ない眼差しで。その瞳の奥に、色んな感情が入り交じっているようにも見える。 
 おもむろに私の肩に触れると、彼はグッと身体を抱き寄せてくれた。

「ミキさん、大丈夫? 怪我ない?」
「うん……それは、平気です」

 私は彼の背に両腕を回した。
 恐怖なんて忘れたい。たった今起こったことも、最低なあの男のことも全部記憶から消してしまいたい。
 彼のぬくもりが、安堵感を与えてくれる。震えていた身体が、少しずつ落ち着いていくの。
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