日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 しばらく抱き合ってから、私はそっと彼から離れていく。目と目を合わせ、手を握り締めた。

「ねえ。トウリョウさん」
「なんですか」
「どうしてここに……?」

 私が素朴な疑問を口にすると、トウリョウさんはなぜか顔を赤らめた。

「ああ、それは。ワタシはアナタ驚かせたかったです」
「えっ」
「実は今日のお昼に日本に来た。ワタシは秘密にシンバシホテルへアナタを迎えにいき、早く会いたいと思いました」
「そうだったの?」

 なんか、ちょっと可愛いって思っちゃう。私はふと笑みを溢す。
 すると彼もニコリと微笑んでくれて。

「あっ。ミキさん、笑ってくれた。ワタシは嬉しい。アナタの笑顔はいつも素敵です」

 子供のようにはしゃぎながら、彼はもう一度私に抱きついてきた。

 ……やっぱり。彼のこういうところ、大好きだなぁ。素直に気持ちを伝えてくれるところ。未だに慣れなくて小恥ずかしいけれど、とっても嬉しいよ。
 今の今まで負の感情が私の心を支配していたのに。彼のおかげで、一気に場の雰囲気が明るくなった。

「ありがとう。トウリョウさんが来てくれたから、あの男を追い払えました」
「非常に危ないところでしたね。ですが、ミキさんは安心していい。これからワタシはアナタのそばで守りますから」

 私のそばで守る?
 そのひとことに、私は首を傾げた。彼の顔を見ると、真剣な目をしているけれど。

「そう言ってくれるのは嬉しいです。だけど、トウリョウさんが上海に帰ったら、そうはいかなくなっちゃいますね」
「そのことですが──」

 苦笑する私とは反対に、彼はニコニコ笑顔でいる。ズボンのポケットからおもむろに財布を取り出し、一枚のあるカードを手に取った。それを得意げに見せてくれる。
 それは。

「……在留カード?」
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