日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 彼の目をじっと見ながら、私はゆっくりと口を開く。

「ご実家は……トウリョウさんのお父さんは、どうするの? 一人暮らしになっちゃいますよね」
「ああ。そのことですが」

 不安に思う私をよそに、チョウさんの口調は穏やかだ。

「ワタシのお父さんは怒りました。ガンコオヤジ(・・・・・・)です。ワタシは一緒に暮らすと伝えた。しかし邪魔だと思われました。東亮(お前)の好きなように生きる、お父さん(おれ)のことは気にするな、と、何度も言われました」

 懸命に説明するチョウさんの目が、束の間寂しそうな色を浮かべた。

「ワタシは考えました。何が一番なのか? お父さんは嘘を言わない人です。お母さんは死んで一人になった。でも、ワタシのことをよく考えている。ガンコオヤジの優しいお父さんだ」

 彼はそっと私の両手を握りしめた。
 正直、拙すぎる日本語で何を言っているのか理解するのにとても苦労してしまう。けれど、なんとなく言いたいことは伝わる。私は静かに相づちを打った。

「ワタシはわがままをすると決めた。アナタのそばにいたい。日本で暮らすと決めたとき、お父さんは喜びました。お母さんの願いもあったと言っていたよ。ワタシは好きに生きます。ミキさんと一緒に生きます」

 ひとつひとつの言葉に、私は胸がいっぱいになった。
 本当の……本当にいいの? ずっとそばにいてくれるの……?
 どんなに嬉しくても、ここで冷静さを失ってはいけない。
 コクリと頷き、私は言葉を連ねた。

「私も、チョウさんと一緒にいたい。すごく驚いてるけど……でも、嬉しい」
「アナタが嬉しいとワタシも幸せです」
「うん。でもね──トウリョウさんのお父さんの今後のことも、考えていきたい」

 私がそう言うと、彼の目が見開いた。

「ご両親はきっと素敵な人たちなんでしょう。トウリョウさんの幸せを願っているお父さんのためだったら、私もできる限りのことを協力したい」

 自分でも驚いた。こんな風に将来のことも示唆する発言までするなんて。

 でもね──分かるよ。トウリョウさんのお父さんだもの。きっといい人なんだって、分かるから。

「もっともっと中国語が話せるように頑張って勉強します。だから、トウリョウさんも私に言葉を教えて」
「はい……はい! 当然! ワタシがアナタに中国語を教えましょう!」

 涙目になりながらも、彼は何度も何度も頷いた。
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