日本語が拙い外国人と恋仲になりました

 一年前までは、あの人といつか結婚できると思っていた。奥さんがいたことも知らずに。都合がいいときだけ呼び出されていたのに。会う度に幸せを感じて。もちろん、不倫だと分かっていれば絶対にしてはいけないこともたくさんしてきた。
 ……だから私は、汚らわしい。誰とも幸せになる資格なんてない。

 電車に揺られながら、深い深いため息が漏れた。
 読書アプリをそっと閉じ、窓の外を眺める。都会の眺めは、いつ見たって賑やかだ。高層ビルやマンションが建ち並び、たくさんの人や車が行き交い、朝晩問わず忙しい時が流れる。
 そんな街の中で働く、独りの女として生きていくのが私にはお似合いだわ。

『新橋、新橋です。お忘れ物にご注意ください』
 
 あっという間に目的地まで行き着いた。
 席を立ち上がり、荷物を持ってホームに降り立つ。今住んでいる駅よりも遙かに人が多い。

 重い足取りで、私は今日も職場へ向かっていった。
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