日本語が拙い外国人と恋仲になりました

7・気まずい?



「ええ!? 断っちまったんすか!」

 狭いスタッフルームに菅原くんの絶叫が響き渡る。
 私は咄嗟に人差し指を立てて「し!」と注意した。

「ロビーまで聞こえるわよ!」
「す、すんません……つい」

 パソコンのモニターに映る監視カメラの映像を、慌てて確認した。幸い、ロビーにお客さんはいない。
 菅原くんは安堵したような顔をする。声量を落とし、再度口を開いた。

「村岡さん、出勤するなり元気ないなーと思ったら。チョウさんとそんなことがあったんですね……。だから落ち込んでるわけですか」
「ううん。私は元気よ。ただ、これからちょっと気まずくなるのかなぁって」
「あぁー」

 両腕を組み、菅原くんは険しい表情を浮かべた。

「職場恋愛とかって、こうなると面倒っすよね。俺も似たような経験があるから、その気持ち分かる気がします」
「菅原くんも?」
「俺の場合は高校のときの話なんすけどね! 同じクラスの子と付き合ったことがあるんですけど、半年くらいでケンカ別れしちまって! いやー、クラス替えで別々になるまでマジで気まずかったっす。クラスメイトの何人かに勘づかれてて、変に気ぃ遣われてますます居心地悪かったっていうか」
「そ、そうなんだ。大変だったね……」
「でも、村岡さんとチョウさんの場合はちょっと事情が違うか。一番気まずいのはチョウさんだと思いますよ。振られたばっかなんだし」

 話をしながら、菅原くんはチラッと今日のシフトを確認した。顎に手を当て「なるほど」と呟く。

「今日はチョウさん、夜勤なんっすね。十時からだから、ちょうど村岡さんと入れ替わりだ」

 私はぎこちなく頷いた。
 今日、チョウさんが夜に来る。軽く引き継ぎをするだけだから長話をすることはない。
 でも……

「あ」

 と、菅原くんは唸りながら続けた。

「来週のシフト、やべぇっすね。三日連続でチョウさんと日勤被ってるじゃないですか、村岡さん」
「……ええ、そうみたいね……」

 大変なことに、来週はチョウさんとシフトが被りまくりなの。
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