日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 更衣室で制服に着替え、髪をひとつにまとめる。軽く化粧を直してから、スタッフルームへ戻った。
 支配人が他のスタッフたちに連絡をとりながら、シフトの組み直しをし続けている。

 チラッとパソコンを覗いてみると、「趙 東亮」の部分は昨日以降から全て黒塗りされている。
 本当に、チョウさん来ないんだ……。
 無心でタイムカードを打ち、引き継ぎノートをチェックした。何号室と何号室のお客様がチェックアウト時に領収書が必要なこととか、備品発注の件とか、本日の残室が少ないので予約状況を見ながら料金の変更をする、などなど、特に大したことは書かれていない。
 最後の行には──チョウさんが急遽お休みすることになった件について記入されていた。いつまで休みかはまだ決まっていない、とも。
 その内容を見て、再び考えてしまう。
 いつ日本に戻ってくるのだろうか。一体彼の身に何が起こったのか。気になって気になってどうしようもなかった。

 でも──憂いていたって仕方がない。とにかく今は、仕事に集中しなきゃ。
 そっと引き継ぎノートを元の位置に戻し、私は業務を開始した。
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