日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 ──チョウさんは仕事に対してすごく真面目な人だった。よく話を聞き、分からないことがあれば積極的に質問してしっかりメモも取ってくれる。

「朝は基本的に客室のチェックアウト状況を確認して、忘れ物があれば保管作業をします。ここは小さなホテルだから、清掃員の人数が足りない日は手伝うこともある。デイユースのお客様が来館された際、予約なしでもお部屋が空いていればお通しします。午後三時には当日のチェックインが始まるので、それまでに準備を済ませます」
「ええっと、ムラオカさん」
「なに? 質問あるなら遠慮なくどうぞ」
センソウイン(・・・・・・)とは一体なんですか」
「はい?」
「センソウインの人数が足りないと言いましたね。センソウ、ワタシは好きではない」

 眉を落としながら、チョウさんはそんなことを言い始める。
 ……なに、センソウって。戦争? いや……違う。まさか、清掃が聞き取れなかったの?

「あの、チョウさん」
「はい」
「センソウじゃなくて、セイソウ、ね? 打扫! お掃除のことですよ」
「ああ、掃除! 是打扫! 聞き取りを誤ってしまった。申し訳ない」

 チョウさんは必死にメモを修正していた。それも、全部中国語で書かれてる。
 日本語が通じないこともあるけど……中国語の単語を使えばなんとか伝わるから、まあいっか……。

 正直、普通に教えるよりも時間はかかる。けれど、チョウさんはひとつひとつのことを真剣に取り組んで、素早く吸収しようとしてくれるからそれはすごく助かった。
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