日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 うーんと唸る私に、支配人はパソコンで予約画面を開いた。

「この方。予約受付者が村岡さんになっているんだよ」

 確認すると、たしかに私の名前でタナカユウキ様の予約が取られていた。シングルルームを二部屋、昨日すでにチェックアウトされたようだ。
 そうだ。たしか朝早くに電話が来て二名利用で取ったのよね。
 眉を落とし、支配人は更に続ける。

「村岡さん、ちなみにお部屋の希望は訊いた?」
「えっ」

 その問いに、私はすぐ答えることができなかった。
 そういえば、利用人数は訊いた覚えがあるけれど──部屋タイプや室数は訊ねなかった気がする。
 画面にはシングルルーム二部屋の予約。
 ……嫌な予感がしてならない。

 パソコン画面から顔を逸らし、私は恐る恐る支配人の方を向いた。

「訊かなかったと思います……。私の記憶が正しければ、ツインを一部屋で確保しました」
「そう、その通り」

 支配人が頷く前で、私は一瞬目の前が真っ白になった。

「タナカユウキ様は二名利用で、部屋は二室予約したかったそうなんだよ。お客様の方でも二名利用としか伝えてなかったと仰っていたけど、ホテル側がしっかり部屋数も確認しなくちゃいけない。基本だよ」
「はい……そうです。その通りです……。やだ、私……どうしてこんなミスを……」

 今までしたことがない失敗に、私は目眩がした。
 だけど支配人はあくまでも穏やかだった。
 この日はたまたまキャンセルが出てシングルルーム二つ確保できたけどね、とか言ってフォローしようとしてくれてる。
 だとしてもそれは結果論。……もし満室だったら? お客様に相当な迷惑をかけることになったかもしれない。
< 44 / 129 >

この作品をシェア

pagetop