日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 動転する私に向かって、支配人は優しい口調になる。

「村岡さんがこういうミスをするなんて珍しいよね。大したことじゃないから今後注意すればいいんだけどさ……よかったら、この機会に長めの休みでも取らないかい?」
「えっ」
「有給だってまだ十日以上残っているよ。この際、リフレッシュ期間と思って来月に取っちゃいなよ」
「で、でも支配人」

 私は大袈裟に首を横に振った。

「今は人が足りないんですよ。こんなときに私が抜けたらスタッフみんなに迷惑をかけてしまいます」
「心配しないで。一応、来月から本社の人間がヘルプに来ることになったから」
「えっ、そうなんですか」
「現場の経験者だし、なんとかなるよきっと。どのくらい補佐の仕事ができるかはわからないけどね。まあ菅原くんも来月のシフト増やしてくれたし、村岡さんは気にしないでよ」
「そ、そんな……」

 中国語翻訳スタッフが完全不在になることだけは結構痛いけどねぇ、なんて支配人は笑いながら言うの。
 変な気遣いしないでほしい。私は大丈夫なのに。
 いや、そうじゃないのかも。こんなつまらない失敗を連続でして、少しは休んで頭を冷やせってことなのかも。
 どんどんマイナス思考になってしまう。
 こんなダメな私に対して、支配人は笑顔を向けてくる。

「村岡さんはいつも頑張りすぎだよ。去年だって結局有給使い切れてないし。気分転換に旅行とか行ってきなよ。戻ってきたら、またコキ使わせてもらうから」
「コキ使うって……支配人、それはパワハラです」
「ははは、冗談!」
< 45 / 109 >

この作品をシェア

pagetop