日本語が拙い外国人と恋仲になりました
「村岡さん」

 菅原くんは驚いたような顔をして私をじっと見つめる。すぐにニヤリと笑うと、身を乗り出してきた。

「やっと素直になったんすね!」
「えっ? ちが……」
「違くないっす! 今の村岡さん、顔が真っ赤になってるっすもん」
「それはアルコールのせい」
「久々に女の顔になったって感じですよ! そのままの勢いで、チョウさんに会いに行ったらどうっすか?」
「えぇ?」

 菅原くんはさっきから全然人の話を聞いてくれない。無理やり話を進めようとする。
 彼の顔も赤くなってて、だいぶアルコールが回ってきたようだ。いつも以上のお節介が止まらないの。
 私はもう一口カシオレを体に補給した。

「会いに行くって言っても……彼、今は上海にいるのよ?」
「だからなんすか? 飛行機で行けばいいじゃないっすか」
「そんな……簡単じゃないでしょう? そもそも私、海外に行ったことがないの!」
「別に身構える必要ないですよ。パスポート申請して、航空券予約すればいいだけじゃないっすか」

 ほろ酔いの菅原くんはスマートフォンを取り出し、何やら色々と調べ始めた。

「ほら、直行便も出てますし、オフシーズンの今だったら安く行けます! あっ、でもくれぐれも体調は崩さないでくださいね。そんでパスポートを取るなら一週間くらいかかるから、明日にでも申請してください! そうすれば休暇中には間に合いますから! 一週間くらいの滞在なら観光ビザも必要ないみたいっすよ」

 だなんて、矢継ぎ早に話し続けている。
 ……私より菅原くんがノリノリになってどうするの。
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