日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 肩をすくめ、私はふと笑みを溢した。

「ねえ、菅原くん」
「あ……すんません。俺、また余計なことしちまってますね」

 菅原くんはハッとしたように口を閉ざし、軽く頭を下げる。 
 でも私は、笑みを絶やさず首を横に振った。

「ううん、違うの」
「えっ?」
「……ありがとう。そこまで気にかけてくれて」

 この一言に、菅原くんはパッと表情を明るくした。

「当たり前じゃないですか! だって、もし村岡さんがホテルの仕事辞めちゃったら、うまい料理奢ってくれる人がいなくなっちまうんですから! 慰めるのが俺の務めです!」
「ちょっと?」
「すんません」と言いながら、菅原くんは水をガブッと飲み込んだ。

 まったく。いつもいつも余計なんだから。一言も辞めるなんて言ってないし、毎回奢るわけもないし、慰めてもらう必要だってない。

 けれど──そんな菅原くんのおかげで、私は大きなきっかけを得ることができた。
 チョウさんに会いに行こうだなんて、提案してくれなきゃ思いつきもしなかったもの。
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