日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 父はそっと腰を下ろすと、母の顔をじっと見つめた。語尾を強くしながら語り紡ぐ。

「お前が日本で暮らすことは、母さんの願いでもあるんだよ」
「……え?」

 僕の方を一切見ることなく、父は続けた。

「お前が幼い頃からおれたちは勉強を押しつけてばかりいた。塾に通わせ、家でもほぼ勉強、遊びに連れていってやることなんて全然しなかったな……」

 たちまち幼い頃の思い出が蘇り、僕の胸がチクッとした。
 たしかに僕は、物心ついた頃から勉強漬けだった。国内の四大大学へ進学するんだと父と母に言われ続け、それが当たり前なんだと思っていた。
 同年代の子どももみんな勉強熱心で、僕は他の子たちに負けまいと勉学に勤しんだ。

 でも現実は、決して甘いものではない。
< 64 / 129 >

この作品をシェア

pagetop