日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 僕は高考(中国の大学入試)に失敗してしまった。
 信じられなかった。僕は生まれも育ちも上海で、漢民族であるというのに。死ぬほど勉強をしてきたはずなのに。
 今まで支えてきてくれた両親の悲しい顔を見るのも辛かった。僕のためにたくさんお金も費やしてきただろう。
 それなのに僕は……。
 自分の不甲斐なさから逃げるように、僕は自らお金を貯めて日本へ移住した。友人が日本へ留学すると言い出したので、僕もその話に乗る形でついていったんだ。
 しかしそれを機に、いかに自分が「勉強ができない人間」なのかを思い知らされるきっかけにもなった。
 日本語学校で語学を学んでもなかなか身につかない。多くの日本人と関わった方がよいと思い、積極的に繋がりを増やしていった。
 けれど、僕の日本語は上達しなかった。十年経った今でさえ酷い有様だ。
 しかし、こんな僕に「日本語を教えてあげる」と言ってくれた優しい人に出会った。
 ムラオカさん。今頃どうしているのかな。
 またもや彼女のあの笑顔を思い出してしまう。
 読み書きが苦手な僕に対して、お客様にメッセージを書けるくらいにならないとね、と彼女は言った。僕は嬉しくて、彼女から日本語を教えてもらえる時を待ち望んでいた。
 けれど──もう、諦めた方がよいのかもしれない。
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