日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 頑固親父は絶対に頷いてくれないだろうけど、関係ない。
 往復の航空券を取っていなくてよかった。
 葬式が終わって落ち着いた頃、ハヤシ支配人に連絡をしよう。
 そして……彼女にも。
 ムラオカさんにさよならを言いたくないけれど、ひとまず母が亡くなったことだけは伝えなくては。彼女にはとても世話になった。せめて、ひとことだけでもメッセージを送ろう。

 全ての考えがまとまると、僕は父の小さな背中に言葉を放った。

「父さん」
「……なんだ」
「僕は、父さんたちが思っているよりも全然ダメな奴だ。勉強なんてろくにできない、不出来な息子なんだよ」
「何を言うんだ?」
「……これ以上日本語を勉強しても意味がない。中国(こっち)でちゃんと仕事を探して、父さんと一緒に暮らすよ」

 僕がそこまで言うと、父はゆっくりとこちらを振り返る。瞳が揺れ、唇を震わせていた。

「不出来なんてことはない。こっちで暮らすことが、お前の望みなのか?」

 弱々しい口調だった。
 僕は、無理にでも笑みを作り、頷いた。
< 66 / 172 >

この作品をシェア

pagetop