日本語が拙い外国人と恋仲になりました

14・上手くいかない旅

※ ※ ※

「はぁ……参ったわ……」

 ホテルの一室で、私はベッドに座りながら一人項垂れる。
 時刻は現地時間で夜の九時。

 一日目は結局、何もせずに終わってしまった。
 空港からホテルまでの移動にやたらと時間がかかった。荷物が多いから地下鉄やバスはやめて、タクシーを利用したんだけれど……。

「あのタクシー、確実に遠回りしすぎよねこれ」

 三百元と記された領収書を眺めながら、私は深いため息を吐く。事前に調べてみたら、タクシーだと空港からホテル(ここ)まで百五〇元くらいで済むはずだったんだけどなぁ……。
 あの運転手さん、すごく早口だった。しかもちょっと訛りが入った中国語で聞き取りづらかったし。なんとなく聞いていると、私が観光客だから上海市内をちょっとだけ案内してあげるよ、みたいなことを言ってた気はする。
 はっきり断れなかった私も悪い。でも、まさか倍の料金を取られるとは思わなかった。
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