日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 私はどうにか平静を装い、知っている限りの中国語で返してみせる。

「您好。这是前台员。退房时间10点钟」

 チェックアウト時間は十時です、とお伝えすると、お客様は顔をしかめて腕時計を確認した。

「我现在不能退房」

 え。いまはチェックアウトできないって言ってる。なんで……?

「因为行李没整理好」

 荷物をまだ整理してないって。
 ……それはそちらの都合でしょう。
 胸中で呆れながら、私は仕方なくチェックアウト延長のご案内をすることに。

「好的。您可以退房时间11点。请支付延长费1千快」

 十一時まで延長してもよいので、延長料金を千円お支払いください、と説明する。
 すると、お客様はたちまち血相を変えた。

「啊? 1千快? 为什么要付钱?」

 なんで払わないといけないのって言われても。そういう決まりなんだから仕方ないでしょ……? お部屋の案内板にも記載されてるんだけど、きっと読んでないんだろうな。
 今回だけ特別にこのお客様だけ無料で延長なんてできない。他のお客様はみんな延長料金をいただいているのに。
 私がどうにか中国語で説明するも、お客様は全然納得してくれない。どんどん声は大きくなり、早口になり、聞き取りが困難になってきた。
 やだ。もう、泣きそう。
 困り果てていると──
 ふと、背後から人陰が現れた。

「您怎么了」

 颯爽と現れたのは、チョウさんだった。
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