日本語が拙い外国人と恋仲になりました
「はぁ……」

 川沿いの手すりに両手を添え、肩をすくめる。先程からたくさんの船が行き交い、忙しそうだ。それとは反対に、私の頭の中はここに来てからずっとぼーっとしている。全てが空っぽだった。
 
 旅の目的を失ったんだもの。チョウさんに会えないなら、ここにいる意味なんてない。

 帰りの航空券の日にちが変更できるのなら、今すぐに帰国したいくらい。
 私がそんな風に自棄になっていると。
 不意に、私のスマートフォンが着信の知らせを響かせた。
 画面を確認すると、相手は菅原くんだった。
 やだな。この現状を伝えたら、また呆れられそう。
 力なく私は通話ボタンをタップした。

「もしもし?」
『村岡さん、こんちゃー! まだ上海にいますよね? 色々と話が聞きたくて電話しちまいました!』
「あー……うん」

 自分でも引くほど暗い声。
 電話の向こうで、菅原くんが呆れたような顔をしているのが想像できる。

『その声……まさか、上手くいかなかったんですね?』
「まあ、そんなところ」
『あちゃー。やっぱり!』
「やっぱりって何よ」
『村岡さんたちがそう簡単に上手くいくとは思ってなかったんで! あと二日は滞在できますよね? その間になんとかしちゃってくださいよ!』

 菅原くんはわざとなのか、明るい口調でそんなことを言ってくる。
 けれど私は、この現状をどうにかするつもりもないし、どうにもできない。深く息を吐いてから答えた。

「もう、いいのよ」
『……えっ?』
「チョウさんとは、会えないから」
『んーっと。どういうことっすか?』

 私は昨日までのことを、全て菅原くんに伝えた。時折驚いたような相づちを打ちながらも、彼は最後まで私の話に耳を傾けていた。
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