日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 なんとなくテレビをつけて、ソファに座りながらスマートフォンを弄る。
 いつも真っ先にチェックしてしまうのは、メッセージアプリだ。
 ──彼女から連絡が来ていないか確認する習慣がどうしてもなくならない。
 未だにムラオカさんのことが頭から離れられないんだ。
 何度メッセージを開いたって、僕が最後に送った内容で止まっているというのに。
 そもそも昨日、彼女から言われてしまったじゃないか。「さようなら」を。
 僕は自分で日本には戻らないと決めた。それを伝えたからお別れの言葉を向けられただけなのに。
 だけど……ムラオカさんからさよならを言われると、胸がすごく苦しくなった。
 僕が心から好きになった女性。どこかサバサバしていて、それでいて優しい心を持つ人。
 そんな彼女は時折、寂しそうな表情を浮かべていた。僕はなんとなくそれに気づいていたけれど、聞き出すことができなかった。
 だって僕は、彼女の恋人でもなんでもないから。
 勝手に恋をして、一方的に想いを伝えて、あっさり玉砕した身。ムラオカさんのことを支えたいと思っても、それは単なる迷惑でしかない。
 僕は誰かを好きになると周りが見えなくなって、好きな相手に深いところまでつっこんでしまう癖がある。それで何度も失敗してしまった。
 だからもう、ムラオカさんにも他の誰にも嫌な想いをさせたくない。
 けれど僕は、それを理由に彼女から逃げてしまっているのかもしれない。
 もちろん、父が心配で上海に残りたいというのは本心だ。だが、数日間一緒に暮らしてみて、今すぐ同居しなくても大丈夫そうなのは実感している。近所に親戚が何人もいるし、僕の役目はほぼない。なぜか父も僕を日本へ追い返したいようだし。
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