日本語が拙い外国人と恋仲になりました
 スマートフォンと睨めっこしているうちに、車内はいつの間にか混雑していた。真後ろにいた人の背中が軽くぶつかり、僕はその拍子でよろけてしまった。

「……あっ!」

 大変だ。
 少しよろめいた反動で、指先が送信ボタンに触れてしまったようだ。
 慌てて取り消しボタンを押そうとしたけれど既に遅い。
 どうしよう、どうすればいい。こんな内容を送って本当によかったのか?
 いや、ちょっと待て。こうなったら、もはやウジウジしている場合じゃない。
 僕が彼女を想う気持ちは本物なんだ。だったらこれを最後のチャンスと捉えて、我が道をいくしかないだろ。
 もう一度彼女に会いに行って、自分の気持ちを真っ直ぐに伝えるべきだ。
 心の中で強く意思を決めた頃、南京东路駅に到着した。ホームに降り立ち、僕はしっかりした足取りで地上へと駆け上がった。
 眩しい夜景が目に飛び込み、まるで僕の心の奥まで照らしてくれているようだ。
 上海の夜空に聳え立つ东方明珠を目指して、僕は一歩一歩大きく前を進んでいった。

 ──ムラオカさん、こんな僕をどうか許してください。諦めきれず、少しの希望を信じてアナタに会いに行こうとする僕の想いを、もう一度だけ伝えさせてください。
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