定時退社の主任には秘密がある
1話
「取引先への新商品プレゼンを私が、ですか!?」
柚亜はあまりのことにフロアに響くような大声を上げた。医療事務から営業企画へ齢二十九で転職して早二年。これだけの大仕事を指示されるのは初めてのことだ。それに対して部長はペンを回しながらニコニコしながら言う。「何も一人でやれって言うんじゃない」と。
「補助役として東海林をつける。いいな、東海林?」
「承知いたしました」
部長の近くのデスクで背筋を伸ばしパソコンに向かっていた東海林叶がこちらを見て頷いた。オールバックの黒髪が立ち上がり、よく磨かれた革靴が柚亜の隣に立つ。切れ長の目が少し威圧を感じさせた。東海林叶は二十八歳で主任職になった年下の上司で、営業企画部のエース。自分の仕事だけではなく課長の補助まで仕事は多岐に渡る。仕事量は誰よりも多いのに、定時で必ず帰宅することで有名だ。東海林とはたまに様子を伺うように「体調や気分は平気か」と聞かれるものの、これと言った仕事以外の私語はしたことがない。
「ひと月と時間がないがしっかり頼むぞ。中村、これ上手く行ったら評価も上がるからな」
「は、はい」
首筋に冷や汗がたらりと伝う。初めて大きな仕事を任された充実感よりも、柚亜にとっては上手く出来るかと言う不安の方が大きかった。
柚亜はあまりのことにフロアに響くような大声を上げた。医療事務から営業企画へ齢二十九で転職して早二年。これだけの大仕事を指示されるのは初めてのことだ。それに対して部長はペンを回しながらニコニコしながら言う。「何も一人でやれって言うんじゃない」と。
「補助役として東海林をつける。いいな、東海林?」
「承知いたしました」
部長の近くのデスクで背筋を伸ばしパソコンに向かっていた東海林叶がこちらを見て頷いた。オールバックの黒髪が立ち上がり、よく磨かれた革靴が柚亜の隣に立つ。切れ長の目が少し威圧を感じさせた。東海林叶は二十八歳で主任職になった年下の上司で、営業企画部のエース。自分の仕事だけではなく課長の補助まで仕事は多岐に渡る。仕事量は誰よりも多いのに、定時で必ず帰宅することで有名だ。東海林とはたまに様子を伺うように「体調や気分は平気か」と聞かれるものの、これと言った仕事以外の私語はしたことがない。
「ひと月と時間がないがしっかり頼むぞ。中村、これ上手く行ったら評価も上がるからな」
「は、はい」
首筋に冷や汗がたらりと伝う。初めて大きな仕事を任された充実感よりも、柚亜にとっては上手く出来るかと言う不安の方が大きかった。